歪みのない視界を!


下の写真をご覧ください。 2枚の写真は同じメガネを撮影したものです。
左側は普通にそのままメガネを撮影したもの。右はカメラの前に特殊なフィルターをセットして撮影したものです。
左の写真を見るかぎり何の問題もないように思われますが、「ヒズミ」を確認するための特殊フィルターを通した右の写真を見ると、驚き!の世界が広がります。
この、レンズ周辺にあるモヤモヤ〜っとしたシミのような、縞模様みたいなものが、実はレンズの「ヒズミ」なんです。レンズに圧力がかかり、形状が歪められているために起こります。
※冒頭の写真は、右側写真の右レンズを拡大したものです。

普段は見ることの出来ないレンズの「ヒズミ」、、、 その状態を一度 見てしまうと、
と、心配になってしまいますが、

実際のところ、少々の「ヒズミ」であれば、ボヤケて見づらいとか、視界が歪んでる!などといった、明らかな症状が出るわけではありません。
しかしながら、影響が無いということでもありません。
なんとなく疲れる。 頭が重くなる。 なんだかフワフワする。 気分が悪くなる。 などの不快な症状となってあらわれる事があります。 (レンズの変形を伴うような大きなヒズミでは、あきらかにゆがんで見えることもあります)





メガネは、レンズをフレームの形・サイズに合わせて削り、組み立てて作ります。
最近では、レンズを削る機械も進歩し、かなり自動処理で作業ができるようになりました。言い換えれば、それほど熟練していない者でも作業が可能になってきているということです。
自動制御のレンズ加工機で、レンズを削っているところ

ところが、 実はこの自動化が問題で、、、
ササッと、セッティングし、ガァーっと削って、細かな調整なしにパパッと組み立ててしまうと、「ヒズミ」だらけのメガネが出来上がってしまうのです。

しかも、今はプラスチックレンズが主流です。 柔軟性のあるプラスチック素材は、少々の形状不良やサイズの不適合も許容してしまいます。ギューっと押し込んでやれば、それなりにフレームに納まってしまうのです。 この許容部分が「ヒズミ」になるわけですが、、、
それが、そうとも言えません。 実は ヒズミが全く無いというのも別の問題が発生してしまうのです。
「見る」ということにおいて考えるのであれば、「ヒズミ」は少なければ少ないほうが良いのですが、プラスチックレンズで「ヒズミ」ゼロを目指すとレンズがフレームから外れてしまいます。
プラスチックレンズは素材が柔らかいですから、力をかけるとレンズが「 しなり」ます。つまり レンズがいくらか変形するのです。 そのため、ある程度の圧力を残してレンズを支えておかないと、ちょっとしたことでレンズが外れてしまったりします。
何事も「ほどほど」が大事で、適度なテンションを保ちつつ出来る限り「ヒズミ」を抑えることが必要なのです。




機械まかせで加工を行えば手っ取り早いのですが、どうしても満足のいく仕上がりになりません。
レンズを手に持ち、昔ながらの玉摺機で手摺りを行うことで微妙な仕上げが可能になります。
機械加工も全自動モードは使用せず、幾つかの項目での設定を数値入力し、半マニュアル加工で行います。また、フレームもすべてのレンズ種にそのままピッタリ合うなんてことはありませんので、いろいろ調整を施します。

そもそも、プラスチックレンズ全盛になる以前にはガラスレンズを扱う機会も多く、「ヒズミ」を考慮するのは当然のことでした。 
デリケートなガラスレンズは、無理にフレームに押し込むと、すぐに割れてしまいます。 メガネの加工中に割れなくても、お客様にお渡ししてしばらくすると自然に割れてしまうこもあります。 これは、当然お店の不手際ですから、レンズの無料交換となりお店の損失につながります。 そのため、私たちは一生懸命レンズに負担がかからないように工夫しながらメガネを作っていました。 
ある意味、否応なしに「ヒズミ軽減」を考えた加工をせざるを得なかったわけです。
現在はプラスチック全盛ですから、「ヒズミ」を考慮しながら加工を行っている眼鏡店は少ないように思われます。 実際のところ、私もプラスチックレンズが多くなってからは、つい「ヒズミ」の意識が希薄になっていた時もありましたが、ヒズミ確認用のフィルターを使用するようになってからは、初心に立ち戻って加工しています。加工時間はかかってしまいますが仕方ありません。良いものを作るには手間も時間もかかります。
メガネが必要な方の場合、そのメガネを通して世界を見ているわけですから、その根本部分が歪んでいては、なんとも気分が良くありません。 少しでも「歪みの無い視界」で毎日を過ごしたいと思いませんか?
機械が進歩し、作業効率が上がり、その結果としてメガネの低価格化も進んでいます。 お客様の立場で考えれば、価格を抑えて購入できることは良いことだと思います。
ただし、そのために大事なことが犠牲になるようではいけません。 メガネは視覚の入り口にあたる大事な用具ですので、これからも安心してお使いいただけるメガネを目指して行きたいと思っています。







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