物を見るときには、その方向へ正しく眼を向けなければなりません。
その時に、眼位(眼の向き)のズレや眼球運動の不良、また両眼をバランスよく使う両眼視機能が正しく働かなければ、おのずと視力にも影響が出ます。
また、視力に影響がなくても、眼位や両眼視機能を維持する為に、大きな努力が必要な場合には、「視力はいいけど何だか見にくい」とか、「眼が疲れる」、「物がだぶって見える」、「頭痛・肩こりがひどい」、「集中力が続かない」、「球技が苦手」など、一見関係なさそうな症状が起こることもあります。
「メガネ」というものを考えたとき、「良く見える」というだけでなく、「眼位」や「両眼視機能」などにも考慮した「楽に見えるメガネ」・「身体に良いメガネ」というものが必要だと私たちは考えています。





眼位とは、左右の眼の向いている方向をいいます。
眼位の異常は「眼位ずれ」です。 眼位ずれには斜位「斜位」「「斜視」などがあります。
斜位は、融像(両眼の映像を重ね合わせて見ること)を除去した時に起こる眼位のずれをいいます。
別の言い方をすると、
潜在的な眼位のズレがあるものの、見ようとすることにより眼位を修正する力が働き、眼位のズレを補っているため、表面上は眼位の異常が現れていない状態です。
ところが、なんらかの理由でそのバランスがくずれると眼位のズレが起こります。 たとえば、疲れていたり、、他ごとを考えていたりすると、眼位のズレが発生して、物がだぶって見えたりすることがあります。また、常に眼位の修正を行う努力を必要とするため、眼精疲労などの問題が起こることもあります。
正常な位置から視線が外にずれる場合を「外斜位」「外斜位」、内にずれる場合を「内斜位」といい、「上斜位」「下斜位」もあります。
わずかな斜位であれば、ほとんどの方に見受けられ、通常は放置しても問題ない場合が多いのですが、その量と方向によっては視覚に大きな影響を及ぼすこともありますので注意が必要です。
一般的な眼鏡店では、斜位の測定はほとんど行われていません。 特に病気というほどのものでもない為、眼科を受診される方もほとんどありません。 そのため、よくわからない状態でつらい思いをされている場合もあります。 当店では、まずは簡易測定を行い疑わしい所見が見られる場合に詳しく測定させていただくようにしております。
測定は、簡単なものに「カバーテスト」があります。詳しく測定するには他の方法も組み合わせて行います。
カバーテストの(一例)
カバーされた眼は、見る目標を失い、その眼にとっての楽な位置に移動してしまいます。(この場合は外側へズレていきます)。
カバーを外されると、見る目標を認識し、あわてて視線が戻ります。

カバーされた状態が「融像を除去」された状態で、このように外側へ寄る場合は、外斜位となります。

※ 本来なら、カバーされた眼はこちら側からは見えませんが、解説のため、。カバーを半透明状態で表示しています。



斜視は、融像を除去せずとも眼位にズレが生じている状態をいいます。つまり、普段から眼位のズレが明らかな状態です。
斜視がある場合、左右の眼は別々の映像を見ていますので、それを頭の中で重ね合わせようとした時に少々困ったことになります。 異なる2つの映像を1つに重ねることはできませんので、通常は、どちらか一方を消した状態で見ることになります。(この状態を「抑制」といいます)
両眼を開けて見ていながら実は片眼でしか見ていない状態です。
片眼視の状態ですから、視野の狭さや、距離感・遠近感・立体感の不良などが問題となる場合があります。
乳幼児期での斜視は、抑制のかかった眼が「弱視」になるリスクもあり、早期の処置が必要です。
斜視は、眼鏡装用での対応が可能な場合もありますが、 手術や視能矯正訓練が必要となることもありますので、眼科医にて詳細な検査を行うことが第一となります。
急に斜視が起こった場合も注意が必要です。
これは、外眼筋の障害はもとより、その筋肉の動きを支配する神経系統の障害の可能性もあり、また、その原因に重篤な疾病が関連している場合もありますので、症状が見られる場合には、まず医師による診断を受けることをお勧めします。








眼球運動は、右を見たり、左を見たり、眼を内へ寄せたりなど、様々な動きがありますが、その動きに障害が起こることがあります。 これは、外眼筋の障害はもとより、その筋肉の動きを支配する神経系統の障害の可能性もあり、 その原因の中には、脳動脈瘤なども含まれるため、症状が見られる場合には、まずは医師による診断が必要となります。
その他、眼疾患が係わらない眼球運動の問題としては、生活習慣や眼の使い方などから起こる場合があります。 偏ったものの見方を続けたり、一点を見続けることが多い生活になると、眼球を動かす筋肉にコリが発生し、スムーズな動きが出来なくなる場合があります。 眼筋のコリは、眼の動きに抵抗を作る為、さらなるコリを招いたり、視力低下のもとになるとも考えられます。 また、眼の周りのコリは、首や肩など他の部分にも影響をあたえるため、軽視できない問題です。
前者は、まず治療第一となりますが、後者の場合は、眼の使い方の改善・適切な眼のストレッチを行うことにより、改善が可能と考えています。







人は眼を2つ持っていますが、この2つの眼はあたかも1つの眼のように働いています。 これは、両目で受け入れた感覚を脳で統合して1つの新しい感覚としているからであり、この機能を「両眼視機能」といいます。
両眼視機能には「同時視」「融像」「立体視」がありあます。この3つの機能は、右図のようなピラミッドで例えられます。
まず、基礎的な機能として、「同時視」があり、同時視が可能なことにより「融像」を行うことができるようになります。そして、同時視・融像ができて初めて「立体視」が可能となります。
「同時視」ができるけど、「立体視」ができないということはありますが、「立体視」ができるけど「同時視」ができないということはありません。

「同時視」とは、左右に映った映像を同時に見る能力をいいます。
 同時視ができていないと、左右どちらかの映像しか見ていない状態となります。

「融像」とは、左右の眼に映ったそれぞれの映像を、まとめて1つのものとして見る機能です。

同時視では、右眼と左眼の映像をそれぞれ認識できればいいわけですが、「融像」は、それを1つにまとめ上げる必要があります。 映像の融合ですね。

この時、左右の眼に映る映像は、おおむね同じようなものである必要があります。大きさや形状・色やコントラストなどがあまりに違ったものでは、融像できなくなります。

融像が阻害される原因としては、「斜視や斜位」、左右でものの大きさが違って見えてしまう「不同視」、眼疾患や屈折異常による左右の視力差、などがあります。

融像ができなくなると、二重に見えてしまう「複視」、片眼が見えなくなる「抑制」が起こります。

「立体視」とは、ものを立体的に見る機能です。
右眼と左眼は左右に離れている為、わずかに角度のずれた映像を見ることになります。 このズレをもとに脳の中で立体的な映像が作り出されます。

映画やテレビの3Dも同じ原理です。
微妙に角度のズレた右用と左用の映像を同時に映し出し、それを専用のフィルターレンズで右眼には右用の映像、左眼には左用の映像を独立して見させることで立体的に見えるようになります。

娯楽としてはとても面白いものなのですが、注意すべき点もあります。
3Dは平面のものを立体的に見せているわけで、いわば脳をだましている状態です。そのため、眼と脳の間で矛盾が生じていますので、眼がひどく疲れたり、具合が悪くなったりすることがあります。 また、両眼視に問題のある方の場合には、立体的に見えない場合もあります。

「立体視」と良く似たものに、「遠近感」がありますが、これは別のものとして考えます。
遠近感は、目標物の大きさやコントラスト、動くスピードなどにより「片眼」でも感じることができますが、「立体視」は両眼で見ることで生じるものです。







3D映像を体感してみましょう


3Dの見方には「交差法」と「平行法」がありますが、
ここでは交差法をご紹介します。

ペンを2つの二重丸の真ん中に持っていき、そのペン先を見つめます。
視線はペン先に置いたままを徐々にぺんを手前に引き寄せつつ、
奥の2つの二重丸を意識します。
ペンを見ている為、二重丸はぼやけた状態ですが、
2つの二重丸が4つに見え、その後3つに見えます。
3つに見えたら、そのまま少しずつ視線を真ん中の二重丸の方へ持っていきます。
両端の2つを見てはいけません。あくまで真ん中に意識をもっていきます。
すると、真ん中の二重丸が立体的に見えます。

長時間は見ないようにしてください。
交差法は「寄り眼」を強要する見方ですので、
眼に負担がかかります。














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