補聴器のご不満をお尋ねすると、

というお話がよくあります。
そのため、せっかく補聴器を購入したのに あまり使っていないとか、補聴器を買ったけど、あまり効果が無い!などのご意見は、皆様もよく耳にされることがあると思います。では、なぜこのような事になってしまうのでしょうか。
この問題を考えるには2つのポイントがあります。
補聴器を装用することで、いろいろな音が聞こえるようになります。それらの音を、聞く人の立場から3つのグループに分けてみます。
例えば、あなたとお友達の二人で会話をしているときの相手の話し声、、、  これは「雑音」ではありません。
今 まさに聞きたい音で、必要な音です。  ここでは、これを「会話音」と呼ぶことにします。

では次に、あなた達の周りにいる、関係の無い人たちの会話。これらの聞きたくないけど聞こえてくる話し声、これは「会話音」? それとも「雑音」でしょうか。 これも「会話の音」ではありますが、あなた達の会話を邪魔するものですからこれは「雑音」といえます。  ここでは、これを「言葉の雑音」とします。

周りのザワザワ・ガヤガヤした音はどうでしょうか?
これは、「環境音」といわれるものですが、会話をするには邪魔な音ですから これも「雑音」です。補聴器を付けた方の多くが指摘される「雑音」というものがこれにあたります。  これを「騒音雑音」とします。
機械の騒音や、エアコン・冷蔵庫・車などの騒音もこれに分類します。

大雑把に言ってしまえば、補聴器を装用することで、1つの「聞きたい音」と 2つの「雑音」が聞こえてくるわけですが、これら3種類の音が次の「聞こえのメカニズム」のなかでどのように関係してくるかを考えてみます。
雑音と言われるものの中には補聴器自体が発するものもあります。いわゆる機械ノイズというものになりますが、これは極わずかなもので、実際の装用においては ほとんど気にならないレベルだと思われますので、ここでは省略しています。



人が音を聞き取るときの仕組みは、2つのステップに分けて考えることが出来ます。
まず、「聞こえの第一段階」が音を感じ取るステップ。、次の「聞こえの第二段階」は、感じた音を分析・照合し、音を聞き分けるステップです。 この2つのステップをクリアすることで、初めて言葉の聞き取りが可能になります。
まず1つめの 「聞こえの第一段階」は、音を感じることです。
人が音を聞くときは、耳から入った音が電気信号に変換されて聴神経を伝わり脳で認識されます。
たとえば、誰かが「あ〜」と発音したら、その振動が空気中を伝わり耳の鼓膜に届きます。そこから中耳を経由し内耳で電気信号に変換されてから神経を通って脳に届き、そこで初めて「*〜」と なにやら音が聞こえたことを感じます。
この、耳で受け取った「音」を脳で感じるまでの過程が「聞こえの第一段階」です。 
小さな音を感じることが苦手な難聴者でも、補聴器を装用して大きな音にすれば、ほとんどの場合においてこの「聞こえの第一段階」はクリアできます。
ただし、この段階では音として感じただけなので、どんな音なのか聞き分けはできていない状態だと考えます。
まわりのザワザワした音などの「騒音雑音」は、どんな音なのか詳しく判断する必要がありませんので、この「聞こえの第一段階」がクリアできた時点で「聞こえた!」と実感されます。 「言葉の雑音」も同様に内容を聞き取る必要は無い場合がほとんどですから、「聞こえの第一段階」クリアで「聞こえる!」と感じます。 ところが「会話音」に関しては内容が聞き分けできないと聞こえたことになりませんので、この段階ではまだ「聞こえない!」と感じます。

次の「聞こえの第二段階」は、音を聞き分けることです。 脳が音を感じたあとは、その音が何なのかを識別する必要があります。この作業が完了して初めて言葉の聞き分けが出来たことになります。
実は、脳の中には音の「ひな形」ともいえる、「音のサンプル帳」みたいなものがあります。
こういう音が 「あ」 だとか、この音が 「う」 のように見本があって、脳に届いた音のデータと、この見本を照らし合わせてこれは 「あ」 だ、これは 「う」 だ!と聞き分けているのです。
非常に複雑な作業のように思われますが、私たちの脳は瞬間的にこの作業を行い音を聞き分けています。
しかし、難聴者の場合、この作業において問題が発生することがあります。
まず考えられるのは、難聴者の場合、内耳や聴神経にダメージが発生していることが多く、音を電気信号に変換する際や伝達する際に「音のデータ」に変形が生じてしまうことがあると思われます。 そうなると、脳内の「音のサンプル帳」と照合しづらくなりますから、聞き間違いや聞き分け困難が発生します。 また、補聴器を通した音は、以前の慣れ親しんだ「生の音」と比較すると いくらか違う音になりますから なおさらのことです。
もうひとつは、脳内での分析・照合作業が苦手になってしまっていることが考えられます。
聞こえづらい状態というのは、音の少ないとても静かな状態ですから、脳内での分析・照合作業も活発に行う必要がなくなってしまいます。 その状態が長期間にわたると、音の聞き分けが苦手になってしまうのではないでしょうか。
補聴器を装用して いきなり多くの音が脳に届けられても以前のようにスピーディーに処理することは難しく、聞き取りがうまく出来ない状態になることが考えられます。
特に相手の方が早口でお話される方ですと、聞き分けが非常に困難なことが想像できます。

聞こえのシステムを段階的に分類する方法はいろいろありますが、ここでは、「言葉の聞き分け」にポイントをおいて2つの段階に分類しています。






理由はいろいろありますが、
まず第一に言える事は、
聞こえる音の中でも雑音は聞こえやすい音になりますが、会話は言葉を正しく聞き分ける必要があるため、よりレベルの高い聞こえの感覚が必要になることです。
また、このレベルの高い聞こえの感覚 ( 「聞こえの第二段階」のことです )は、難聴者の場合は機能が低下していることもあり、補聴器を装用しても十分な状態まで回復しないことがあります。
その為、雑音などはよく聞こえるわりに、会話が聞き取れないといった状態が起こってしまいます。
「聞こえの第二段階」の状態を把握するためのもので、「言葉の聞き取りテスト」というものがありまして、当店でもよく行っております。 CDから流れる言葉を聞いていただき、その聞き取りの正解率を求めるものですが、音を大きくして聞いていただいた場合でも、言葉の聞き取り率が100%になる方は少なく、だいたい60〜80%くらいが限界という方が多いようです。(健聴者の場合は、ほぼ100%の結果が得られます) 補聴器を装用していないときですと、通常の会話の大きさでの「聞きとり率」が20〜50%程度の方が多いですから補聴器の装用効果は十分にあると考えられますが、決して健聴者と同じレベルまで聞こえているわけではないことが分かります。  ※ 言葉の聞き取り率は、(全く聞き取れない=0%)、(完全に正しく聞き取れる=100%)として表現しています。
---- 言葉の聞き取りテストについて ( 語音弁別測定 ) ------------------------------------------
「あ」とか「き」とかの言葉を聞いていただき、聞こえたままに用紙に記入していただくテストです。言葉の大きさを変えて何通りか行い、最高の聞きとり率を求めます。
詳しくは、コチラをご覧ください→「語音弁別測定」
※ 新規ウィンドウで開きます


まず、補聴器が装用者の「聞こえ」や「使用目的」に合っていること。
最高の器種である必要はありませんが、音質を調整する機能がほとんど無いようなものでも困ります。 形状もいろいろありますので、使用目的やお好みに合ったものであることも大事です。
次に補聴器の調整が適切になされていること。
どんな性能の良い補聴器でも、適切に調整されていなければ使いにくいものになってしまいます。
   
  必要であれば、補聴器を装用した状態で聞こえの測定を行い 不足している音を補っていくような調整も必要です。
また、往々にして装用者が心地よい音に調整していけばいくほど、聞き取り効果が出にくい音設定になっていってしまうことも多いので、使用者と補聴器調整者がよく話し合って調整の方向を決めていくことも大切です。
   
  音質の調整は、装用者の聞こえの感覚や好み・生活環境によっても異なりますので、一度の調整でピッタリ合うということは難しいと思います。 申し訳ないのですが、気になるたびにご来店いただき調整を行うことで、少しずつ理想の状態に近づけていくことが必要です。
最近の補聴器は、調整項目がとてもたくさんありますので、いろいろな設定を行うことができます。 音の大きさに対する感度を変えることも出来ますし、音の入ってくる方向を限定できるものもあります。 なにか感じることがあった場合は、遠慮なくお申し付けいただいたほうが良い結果が得られると思います。
補聴器を装用することで、今まで聞こえていなかった音がたくさん聞こえてきますから、初めから十分な音を出してしまうとうるさく感じてしまいますし、すぐ外したくなってしまってしまいます。 そのため、初めは弱めの音で聞いていただき、段階的に必要と思われる音の大きさまで上げていく調整方法を行うことが多くあります。
使い始めのうちは十分な補聴器の効果が感じられない場合も多いと思いますが、使い続けることで次の段階に進んでいくことが出来ますし、補聴器の音に慣れてくると音の聞き分けも以前よりしやすくなってくることがあります。 
聞こえの効果が分かりにくいと、「つい使うのがイヤになってしまう」ということもあると思いますが、毎日少しづつでもいいので、無理のない程度に使い続けていくことが大事です。
とくに、初めての補聴器装用では、お使いいただく方の「聞こえ」にあわせて段階的に音質調整を行っていきますので、あせらずに、じっくりと補聴器と付き合っていただくことが大切です。
ある意味、これが一番大事なことのように思います。
補聴器を販売している私たちが こんな事を言うのもなんですが、周りの方がゆっくりと はっきりとお話いただくだけで、補聴器を装用していなくても けっこう聞こえてしまい、補聴器無しでもOKということもあります。
とは言うものの、外出の多い方ですといろいろな場面での聞き取りが必要になりますし、中等度以上の難聴者では、やはり補聴器がないと厳しいものがありますので、ぜひとも活用していただきたいのですが、装用される方も その周りの方もちょっとした「こころ配り」ひとつで聞こえの不便さがかなり改善されることがあります。
一般的に、補聴器を装用すれば、「以前と同じようによく聞こえるようになる」と思われていることが多いので、「補聴器をつけたんだから」と、ついつい早口で話してしまったり、急に話しかけたりしてしまうことがあると思います。
話しかけるときは、「相手から見えるところまで行って、話しかける」とか、「いつもより少しだけゆっくりとハッキリとお話しいただく」だけで、かなり聞き取りが良くなることがあります。
また、聞かれる方も「聞こうという気持ち」を意識していただくだけで音に対する感覚がよくなることがあります。
補聴器という 「物」 だけに頼るのではなく、ちょっとした「心配り」をプラスしていただくことが大事なのではないかと思っております。







現在主流のデジタル補聴器では、雑音抑制のための機能が装備されています。
「この雑音抑制機能を使って、雑音を消し去ってしまえば会話が良く聞こえるのに!」とは、誰しも思うところなのですが、実際は そう簡単にはいきません。
雑音抑制機能は、器種によっても その方法は異なりますが、音響特性を調べて会話と雑音を区別し、雑音と思われる音を抑制する方法が一般的です。 この機能を働かせた状態と停止した状態で聞き比べていただくと、その違いは歴然です。
非常に優れた機能ですが、すべての雑音が消えてしまうものでもありません。
そもそも多くの雑音といわれるものは、周りの環境音といわれるものが多いですから、全部消えてしまっては良くない状況も考えられます。 例えば、道路を歩いていて後ろから来た車の音が、もし聞こえなかったら、、、 危険ですよね。
詳しくは、コチラをご覧ください→「雑音抑制機能について」
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ここに記載した内容には、私の個人的な考え方や言葉で表現されている部分もございますので、医療的立場からみると、好ましくない表現があるかもしれません。 もし、不適切な表現などございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。




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